【試験研究】第一原理計算セットアップ(1):VASPアップグレード契約, (1) VASP upgrade contract from VASP 5.

VASP

 VASPは、ウィーン大学で開発された、固体のDFT計算を行うための第一原理計算用のソフトウェアです。もう少し簡単に書くと「物質の性質を予測するための理論計算ソフト」ということになります。同じようなソフトは他にもありますが、最もメジャーと言われています。最近はQuantum Espressoというフリーソフトを使って計算した論文もよくみられるようになっています。私は、新しい計算方法の導入が早いことや、自己無撞着計算の収束が早くて上手と信じてVASPを使っています。なお、私は実験屋であって、理論計算を主には行っておりませんので念のため。

 VASPは直接ライセンス契約を結ぶとソースコードで提供されます。自分でコンパイルして実行環境が構築できるのならば、最新バージョンやバグ修正バージョンがすぐに入手でき、up-to-dateに使えます。

 

VASPのアップグレード

 私はVASP4→VASP5と使ってきたユーザーなので、アップグレード契約を行いました。vaspはバージョン6になってから機能改善がかなりあることはネットからの情報で知っており、いいなあと思っていました。予算の関係もあってアップグレードはペンディングしていたのですが、2022年末に、2023年6月までならアップグレード対象ですよ、というメールが来ました。新年度になって予算の準備ができたので、Ver.5.8から6へのアップグレード作業開始です。

 アップグレードにあたっての契約上のポイントは下記になります。

  • 契約の結びなおしが必要になります。vasp.5.8までは、ウィーン大学とのライセンス契約でしたが、2018年からはVASP Software GmbHという会社とのライセンス契約になりました。Kresse先生、ベンチャー企業を作ったんですね。
  • 「租税条約に関する届出書」が必要となります。二重課税と脱税防止のための条約です。実際にライセンス料を振り込む前に、税務署に提出しておく必要があります。
  • 今回は私が立替えて支払うことにしました。自分の銀行口座のある銀行でないと 外国送金の面倒を見てくれないようです。まず最初に「仕向送金申込書」をwebから入力し、来店予約し、自分の銀行口座から引き落とす形で外国送金となります。身分証の他にマイナンバーカード、銀行印が必要です。
  • 入金が確認できたら、ダウンロードできるようになります。

 

手続きにどのぐらいかかったのか
  • 4月17日に「アップグレード希望」とメールを送ると、翌日には手続き方法を知らせるメールが届きました。License Agreementの書類と、租税条約に関する届出書 ("tax form F3" と呼ばれるもの)がPDFファイルで届きました。書類の書き方は、メールに事細かに書いてあるので、専門家に頼む必要はありません。誰にでもできる感じではありませんが、よく読めば分かります。租税条約についてはちょっと調べる必要がありました。
  • License Agreementを印刷し、使用責任者である私の手書きのサインを書きます。使用責任者のサイン以外に、経理責任者(大学だと学部長 (Dean) )のサインが必要でした。しかし事務が書類を放置していた+学部長が体調不良だとかで、学部長のサインをもらうのに1か月以上かかりました。(そのせいで、オーストリアは夏休み期間に突入)
  • 租税条約に関する届出書の様式3= "tax form F3" を出すと、税金は支払わなくて良くなります。VASP GmbH担当者から送られてきているにPDFファイルの中に、"tax form F3" という書類がありますので、ここに住所などを記入します。大学の場合は、「使用者の支払者に関する事項」において「個人番号又は法人番号」はありませんので空欄のままです。なお、この書類には日本語を書いてはいけません。英語と併記する形での日本語の記入をしてもいけません。
  • "License Agreement" と "tax form F3" をスキャンしてPDF化し、VASP GmbHの担当者にメールで送付しました。この時点で5月末でした。
  • オーストリア側から "Certificate of Residence, according to the Double Taxation Convention between Austria and Japan" が送られてきたのが8月4日でした。2か月かかりました。2-3週間かかるのが普通だそうですが、7月初旬に問い合わせたときには「長期休暇期間中なので時間がかかっている」と言われました。
  • VASPのinvoceも送られてきたので、外国送金をします。事務に相談すると「立替払いでお願いします」と言われたので立替払いに。ところが8月中旬は大学の試験期間中+出張などでバタバタ。
  • 書類を揃えて、大学最寄りの税務署に「租税条約に関する届出書 様式3」を、オーストリア側の書類と共に提出します。これらの書類は返してもらえません。提出前にスキャンしておいてよかったです。
  • 自分の口座のある銀行のHPから、「仕向送金申込書」をweb入力し、来店予約をしました。申込後、銀行窓口に行ってハンコをいろいろ押して海外送金完了となります。海外送金ができる支店は限られているので、訪問日の3営業日以前に申し込みする必要があります。書類は一発で揃えられませんでした。何があったかは下記です。
    • 依頼人住所を銀行口座の届出住所(自宅の住所)に、送金人住所を職場の住所にしたところ、同じにしてくれと言われました。両方とも銀行口座の届出住所にしました。
    • いろいろな銀行を経由して送金された場合、途中の銀行が手数料を抜くことがあるようです。そこで、「お受取人へのメッセージ」のところに "Please pay in full" と書いておきました。無視されたらどうしようもないのですが、念のために、です。
    • 「仕向送金申込書」には、お受取人口座番号(IBAN等)がありますが、同時にBIC (SWIFT) CODE も記入しておく必要がありました。IBANコードがあれば不要とwebページにはあったのですが、両方あったほうが良いようです。
  • 送金までは1-2週間かかります。私の場合も、送金してから2週間ぐらいで確認しましたというメールがきました。VASP GmbH側の対応は早いです。ありがとうございました!